先日のクラウドファンディングで集めた資金でミュンヘンからバスで9時間かけて、ドイツの西のボンにやってきました。
ボンは分断時代の1949年から1990年まで西ドイツの首都であり、ベートーヴェンの生まれの地、そしてハリボーの本店があるところとしても知られています。
ボンはベートーヴェンの生まれ故郷。
21歳まで住んでいた「ベートーヴェンハウス」へ。実際に書かれた楽譜や、補聴器などが展示されていて面白かったです!中の写真は禁止なので撮れなかったのが残念…。 pic.twitter.com/fA5htquGWw
— 遠山 寛治@ミュンヘン (@kanjicuu) 2017年12月10日
今回はるばる来たのは森の幼稚園で日本の曲を演奏するため! ドイツに来て初めて本格的に人の前で演奏する場になりました。
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森の幼稚園の簡単な紹介。
森の幼稚園。聞き馴染みがない方も多いかと思います。
先生(森の幼稚園)が中心となり、家庭と地域と協力して創り上げた安心・安全の環境の中で、子ども達はもちろん、子育てに関わる全ての人達が『イキイキと遊び、逞しく育つ』ことが出来る、森の中にある幼稚園。
またペーターヘフナー氏によると、森の幼稚園を卒業した子は一般的な幼稚園を卒業した子に比べて、「意欲」「協調性」「粘り強さ」「忍耐力」「計画性」などの非認知能力という個人の特性において、高い数値を残しています。
2000年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン氏が「ペリー就学前プロジェクト」の結果を示しながら述べたように、幼児期に非認知能力を育てることが、その子の人生をより豊かなもの(つまり「成功」)に導くとされています。
(記事の後半でより詳しく書いています。自分の子供も入園させたいなと思ったくらい魅力的な幼稚園です。)
同じ奨学金トビタテを受給していて、そこからのつながりで今回この演奏を開くことに協力してくださった小島聖人くん。ドイツの森の幼稚園でインターンをしています。
森の中にあるヴァルツヴェルゲ森の幼稚園(Waldzwerge e.V.)へ
早朝に出発し、ボンの中心部から電車で40分、そこから徒歩20分かけて日も出ていない中を黙々と歩き続けると見えて来ました。

8時になると続々と子供達が登校してして来ます。
みんなとっても可愛いですね〜!
午前中は先生として体験を。
演奏はお昼からなのでそれまでは子供達と一緒にお遊び!
砂遊びから自然と一体化したハンモックやロープを使った遊具、そして木集めなど自分たちで考えた遊びをします。

サッカーもやはり大好き!

午後にヤパーナフェスト(日本人祭り)開催!
午前中に遊び倒した後にいよいよ演奏です。
待ちわびる子ども達。

子ども達にも分かる内容で日本のことを紹介するにはどうしたらいいかなと考え、四季をテーマにすることに。

ドイツも日本と同じ四つの季節がありそれに沿った曲を演奏することにしました。
そして、パソコンで画面を見せながら説明も交えます。
春 さくらさくら

桜が綺麗なんだよ!っと説明し、こんな感じでパソコンを見てもらい演奏。

夏 盆踊り

盆踊りは実際のお祭りの動画を流して、日本人の3人が実際に踊ってみせました。(前日に盆踊り猛特訓しました。笑)
そのあとに子供たちも一緒に。さすがに難しかったかな?

秋 赤とんぼ

秋は赤とんぼでしっとりと。

冬 雪やこんこん

演奏後は子供達から親御さんまで大きな拍手をいただき無事終了!(帰宅前に演奏したのでちょうどお迎えのお母さんたちも聞いてくれました。)
お礼にとTシャツまでいただきました。

そして最後にみんなで記念撮影!
喜んでいただけてようで本当に良かったです。

後日しっかり覚えてくれてたようです。
演奏から数日経って、小島くんから連絡が来ました。

これこそまさに求めていたこと!子供達は日本人、ましてやアジア人と交流することはあまりないでしょうからいいきっかけになれたのかなと思っています。
ここで改めて「森の幼稚園」について詳しく説明します。
小島くんの協力を得まして森の幼稚園について詳しくまとめます。まずは、はじめに紹介した以下の文章について説明します。
先生(森の幼稚園)が中心となり、家庭と地域と協力して創り上げた安心・安全の環境の中で、子ども達はもちろん、子育てに関わる全ての人達が『イキイキと遊び、逞しく育つ』ことが出来る、森の中にある幼稚園。
先生(森の幼稚園)が中心となり、家庭と地域と協力して創り上げた安心・安全の環境の中で
- 先生(森の幼稚園)
- 家庭
- 地域
三つのキャラクターが相互的に協力し安心安全な環境を作ります。それぞれが以下の図のような働きをします。

子育てに関わる全ての人達が「イキイキと遊び」
子ども達
森という開放的かつ無限で唯一無二なる自然物を遊び道具として提供してくれる空間と多種多様な出会いを得られる地域の中で、主体的に活動すること 。
家庭
子育てを先生(森の幼稚園)にまかせっきりにせず、共に育てていこうとすること。
地域
地域資源(優れた人材や博物館などの建築物、伝統行事など)を教育機会として提供し盛り上げていくこと。
各領域における「逞しく育つ」ということ
子ども達
その子どもがその子らしく生きる土台を築くこと(私はそのために必要なのは「香りのよい健康」と「かちとるにむずかしく はぐくむにむずかしい 自分を愛する心」(奈々子に 吉野弘)を持つことではないかなと考えています。by小島くん)
家庭
子育ての悩みを子育ての専門家である先生と共有し、子どもに危害を加えず、「親」として成長していくこと(子どもが1歳なら、親も1歳)
地域
地域問題(少子高齢化、移住政策、地域資源の不活用、伝統の不継承)や教育問題(いじめ、学力低下、体力低下、受け身な態度)を解決していき、地域の活力を上げること。
日本では森の幼稚園がそれほど普及が進んでいない現状。
ドイツ森の幼稚園全国連盟によると、現在のドイツには1500園以上の森の幼稚園があると言われています。日本はその10分の1の約150園と言われています。
日本がドイツに対して普及が遅れている理由1 「自然環境」
ドイツの森というのは平らな台地の上に形成されており、一般市民が散歩、ジョギング、静かな時間を過ごすために訪れるというように極身近な存在です。
森自体も何分か歩けば到着する場所にあります。フォレスターという森林環境を整える仕事をされている方がいるので、森林の中は安全が保たれています。
しかし日本の森にそのようなイメージを持つ人は少ないでしょう。傾斜がきついし、よくいく場所ではないですし、遠い所にありますし、草が多い茂り危険な生物が生息しています。そのため日本の森の幼稚園は活動場所を「森」だけに限定せず、川や畑など広く定義しています。
日本がドイツに対して普及が遅れている理由2 「森の幼稚園の科学的効果の認知度が低い。」
もう一つ原因として、森の幼稚園の効果を理解しきれていない現状があります。
ハイデルベルク大学で博士課程を修了されたペーター・ヘフナー氏の論文(参照)では、森の幼稚園出身と一般の幼稚園出身の子ども達の小学校入学後の育ちを比較するため、ドイツの8つの州第1学年担当教師103名に文書による質問を行い、児童344名(森の幼稚園230名(少女:105名 少年:125名) 一般の幼稚園114名(少女:57名 少年:57名))の結果を集めて比較しました。
質問事項は6つあります。
- 動機づけ・根気・集中
- 社会的態度
- 授業への参加
- 美的な分野
- 認識の分野
- 身体の分野
結果はどうだったかというと、森の幼稚園出身者の方が全てのスコアにおいて長けていました。

- 棒グラフ上が一般の幼稚園出身の子ども達の点数、下のグラフが森の幼稚園の子ども達の点数です。
- 棒グラフが低いほど良い成績であるということです。
- 右側の数字は、一般の幼稚園出身の点数との差を表しています。こちらは大きいほど優れていることを示します。
特に差がみられた上記4点について詳しく示されたグラフが以下のものです。




上記の結果で注目すべきなのは、森の幼稚園出身の子ども達の【非認知能力】の高さ。非認知能力とは、「意欲」「協調性」「粘り強さ」「忍耐力」「計画性」などの個人の特性を意味します。
特に要素①から②に見られるように、森の幼稚園出身の子ども達は、「好奇心」「勉強への意欲」「友達との協力」「ルールを守る」などといった非認知能力が育まれています。
怪我をしにくい、風邪もひきにくい。身体能力にもいい影響が。
東北大学修士課程の松好伸一氏の論文(2016年)(参照)によると、
- 森の幼稚園児は一般的な幼稚園児より身体的領域(身体能力が高い)の平均得点が高い
- 森の幼稚園児は一般的な幼児園児より活動中の協働(友達を手伝ったり優しくできる)の平均得点が高い
- 森の幼稚園児は一般的な幼稚園児より認識の領域(先生の話を聞く事が出来る)の平均得点が高い
というように、ペーターヘフナーが行った調査と同じような結果が出ています。
小島くんのさらなる見解は以下です!
ペーターヘフナーの研究結果の画像の1枚目で、【要素⑥身体的領域】の差が0,02しかなかったのは、いくら森の中で自由に遊んでいるからと言って幼児期の子ども達の体は十分に発達していないために、 結果に大きな差が出ないと考えられます。
森の幼稚園に関するドイツ語記事や日本の森の幼稚園のブログを読んで分かったことは、森の幼稚園の子ども達が健康であるということ。自然の中で日々様々な活動をする子ども達は自分の体の操作能力に長けているためあまり怪我をしない。たくさん遊んで疲れるから、ご飯をしっかり食べ、早寝早起きをします。
さらに、清潔な環境に身を置いていないため、細菌と戦う能力にも優れ、風邪やアレルギーを発症しにくい免疫システムを獲得します。
森の幼稚園では具体的に何が行われているのか?
小島くんがインターンをしているヴァルツヴェルゲ森の幼稚園での1日をまとめると以下のようになります。

散歩の日かどうかは、先生の人数、子どもの人数、前日の出来事などを考慮して、先生だけの朝の会で話し合って決めます。(ちなみに遊び場は全部で5つくらいあるそう。)
ヴァルツヴェルゲ森の幼稚園は「1年の流れに沿って、子ども達の文化や風習の育成に努める」ことを大切にしているので、春夏秋冬に応じて楽器の出来る保護者の方が演奏会をお迎えの時間に開催したり、朝の会でニコラウスとかサンタクロースの劇とか話をしたりしてドイツ文化を育みます。
ヴァルツヴェルゲ森の幼稚園での自由遊びをまとめると、以下の図にように。

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小島くんの野望は、熊本の阿蘇に森の幼稚園を建てること。
最後にこの機会を繋げてくれた小島くんの夢、目標を記載します。
遠山さんのブログを読んでいる皆さん、初めまして。 トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム第6期生の小島と申します。
遠山さんから「将来の意気込みを」と言って頂いたので、 この場をお借りして、少し自分の夢についてお話しさせて頂きます。
私の夢は「子ども達と子育てにかかわる全ての人達が、『イキイキと遊んで、逞しく育つ』社会を実現する」ことです!私は【森の幼稚園】を通じて、その夢の実現に取り組んでいきたいです!
目標としては、阿蘇で自分自身の森の幼稚園を設立し、活動していきたいです!
熊本大学で勉学に励む私は、機会を見つけては阿蘇に足を運び、 その圧倒的な自然、歴史、文化の魅力に毎回たくさんの驚きを感動を感じてきました。 そんな阿蘇も少子高齢化や人口減少が進み、地域創生に向けた対策が望まれています。 私は【森の幼稚園】こそが、阿蘇の活性化に大きな役割を果たすと考えています。 森の幼稚園がもたらす教育効果や子育て環境の改善は素晴らしく、 それらを求めた移住者の増加が鳥取県をはじめ日本各地で見受けられているからです。
阿蘇市が目指す2つの未来「『教育』による人材育成と郷土愛の創造」と「『福祉・生活』の充実による選ばれるまちの創造」の実現に森の幼稚園を通じて、関わっていきたいです。
そして、私が阿蘇で森の幼稚園を設立した際には、
今回の留学を通じて体験した森の幼稚園の本場ドイツの教育方法に
世界ジオパークに選出された豊かな環境を持つ阿蘇をミックスさせた、
【世界ナンバーワンの森の幼稚園】を目指していきます!
教育理念はもちろん「阿蘇で遊ぼう!」です!!
ただ自分自身はまだ留学で何も成し遂げていませんし、 まだまだ夢だけの24歳の若造です。 とりあえず残り3か月の留学を全力で悔いなく過ごし、 帰国後の活動に繋げていきたいです。
この文章を読まれて少しでも森の幼稚園に興味を持って頂けたら嬉しいです。 夢実現のためにこれから頑張っていきますので、暖かく見守って頂けたら幸いです。 最後まで読んで頂き、どうもありがとうございました!
小島聖人

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